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執筆者の写真大久保浩之

引き算の美学

日本には「わびさび文化」という 素晴らしい美意識文化があります。

わびさびの考えを究極まで突き詰めたものが「わび茶」だそうです。

もともと茶道は豪華な茶会から

時代とともに質素倹約が良いとされるようになり

「わび茶」が生まれたとのこと。


心の中にある固定観念を捨て ありのままを受け入れて生きていく

禅の「無」の教えの究極が「わび茶」とされています。

これが ”引き算の美学” です。


日本料理もそうで

食材の一番おいし時に 素材から苦みやえぐみ 臭いなどを取り省き

素材本来が持つ ”旨味” を際立たせる「引き算」の料理法。

欧米の料理はさまざまなソースを作って素材にかける 

足して補う「足し算」の料理法だそうです。


枯山水や水墨画、俳句など

そこには日本人の美意識、自然観、哲学などが詰め込まれていて

伝えたいことは山ほどあっても

極限までそぎ落とすことで 物事の本質を見出す ”美” です。


アップルの創業者であるスティーブ・ジョブス氏は

若い頃から禅に傾倒し 

結婚式では曹洞宗の師を招き仏前式を挙げています。

アップルの社内研修、アップル大学では

ピカソが描いた「雄牛」を教材に

シンプルさと機能美を追求することの大切さを教えています。

ご存知の通りアップル製品の最大の特徴は

デザインがシンプルなことです。

iPhoneやiPadは 一個のボタンにあらゆる機能が集約されています。

今や「シンプル」はあたりまえとなりましたが

発売当初は新鮮さを感じたものです。

また 彼のプレゼンは難しい単語を使わず

ひとつのテーマだけに絞ったシンプルでわかりやすいストーリーです。

素晴らしい説明や考えであっても

それが相手に伝わらなければ意味がありません。

彼の思想は余計なものを思い切ってそぎ落とし

本当に重要なものだけを浮かび上がらせる ”引き算の美学” です。


余計な経験が邪魔をして

出来てないことばかりに目がいってしまう。

本当に重要なことは何か 本当に今やるべきことは何か

それができない要因をそぎ落とすことで

本質がみえてくるはず。


長い夏が終わり 色鮮やかな紅葉の季節から

草花は枯れ 木々は葉を落とし冬になります。

寂しさを感じる季節です。

感性を豊かにし 美しく生きたいものです。

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